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1・ブリテン大王アーサーの誕生

ブリテンの王ユーサー・ペンドラゴンと母イグレーヌの間にアーサーは生まれる。


アーサーは、魔術師マーリンによって、エクトル卿に預けられ、エクトル卿を父、その息子ケイを兄だと思い成長する。


一方、アーサーの父ユーサー・ペンドラゴンが死ぬと、王を失ったブリテンはみるみると衰退した。


カリブルヌス

成長したアーサーは「これを引き抜いた者は王となるだろう。」そう刻まれた岩に突き刺さった剣に出会う。


その王の証である剣を引き抜こうと、数多の力自慢が挑むが誰一人として成功しなかった。


ところがアーサーが試してみると剣はスルリと抜けた。








王の証である剣カリブルヌスを引き抜いたアーサーに対して、エクトル卿とケイは、膝をついて忠誠を誓った。



ブリテン王になったアーサーは、キャメロット城を拠点に、破竹の勢いで領土を拡大した。


しかし、11人の王が同盟を結んでアーサーに反旗をひるがえした。


モルゴース11人の王の中の一人ロット王の妻モルゴースが、スパイとしてキャメロット城に現れた。


モルゴースの美しさに惹かれたアーサーは、父違いの姉とは知らずに一夜をともにする。


これがもとで、後にキャメロット城を滅ぼすモルドレッドが誕生することになる。




11人の王との戦いに苦戦するアーサーのもとに、ペリノア王が街道わきにテントを張って、通行するものに片っ端から一騎討ちを強要して、人々を困らせているという話が届く。


アーサーはペリノア王と戦いに行くが、王の証である剣カリブルヌスを折られて完敗する。
エクスカリバー



魔術師マーリンはアーサーをアヴァロンに連れていき、そこでアーサーは湖の乙女ヴィヴィアンから聖剣エクスカリバーを授かる。







まだ20歳に満たないアーサー王の政治的な若さにつけいろうと、国境を侵してくる敵は絶えなかった。

特にロット王は困難な敵で、なかなか勝ち切ることが出来ないでいた。


そこへ、一騎討ちを通じてアーサーを粋に感じていたペリノア王が応援に駆け付ける。


勇猛なペリノア王はロット王を戦死させ、アーサーに勝利をもたらした。


一方で、ペリノア王(パーシヴァル達の父)がロット王(ガウェイン達の父)を殺した事は、後々キャメロットの軋轢の種となる。



グリフレット


ブリテンを統一したアーサー王のもとには、各方面から武勇に優れた12人の騎士が馳せ参じた。




アグラヴェインアーサーの生い立ちの兄ケイ、先代ユーサー・ペンドラゴンの頃からブリテンに仕えるウルフィアスにブレオベリス、王にして当代屈指の豪傑ペリノア王とその息子ラモラック、勇敢な新世代グリフレット、ルーカン、ベディヴィエール、そして敵だったロット王の4人の息子ガウィイン、アグラヴェイン、ガヘリス、ガレスがアーサーの王としての資質に惚れ込んで集まった。




グィネヴィア1


以前、アーサーが11人の王と奮戦している時に、味方だったレオデグランス王の城で、アーサーは幼い王女グィネヴィアと出会った。




お互いに相手のことが忘れられないでいた。
アーサーは魔術師マーリンに大きく反対されながらもグィネヴィアと結婚することを決める。



アーサーのもとへ嫁入りに向かうグィネヴィアと一緒に、キャメロット城に王と騎士達が共に囲むための円卓が持ち込まれた。



以降、アーサーに仕えるキャメロットの騎士達は「円卓の騎士」と呼ばれることになる。









かなり簡略化し、玄人向けではないけれど深い、歴史や伝説などを表現するブログ

「円卓の騎士」一覧(アーサー王伝説)

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2.ガウェインと緑の騎士

全身を神々しい緑色の衣装に身を包み、その姿は巨体というより巨人ような騎士が、遠い田舎から「円卓の騎士」の武勇を耳にしてキャメロット城を訪れた。


その緑の騎士は噂に名高い「円卓の騎士」がどんなものなのか知りたいと挑発してきた。



そうして、緑の騎士は、手にしていた大きな戦斧を自分の首に振りおろし、一年と一日後に、今度は自分に同じことをさせると誓える挑戦者を求めた。



誰も名乗り出ないので、緑の騎士が高笑いと共に侮辱的な言葉を「円卓の騎士」にあびせるので、アーサー王が挑戦しようとすると、それを制するようにガウェインが名乗り出た。




こうして、ガウェインが戦斧を緑の騎士の首に振ると、緑の騎士の頭は胴体から離れる。




ところが、胴体は離れた頭を拾い上げると「一年と一日後に待っている。」と言い残して去って行く。



それからの一年近く、ガウェインは死刑執行を待つ心持ちで苦しい苦しい時間を過ごすことになる。






約束の日の3日前から、ガウェインは約束の場所まで2時間ほどの距離にある館で過ごす。

親切な館の主人は3日間、ガウェインのために狩りに出た。


一方、館の主人が狩りに出ると、王妃グィネヴィアよりも美しい館の奥方がガウェインを誘惑する。


ガウェインは「親切なご主人を裏切れない。」と奥方のプライドを傷つけないように、礼儀正しく丁寧に断った。


そんなことが3日間繰り返された。


ガウェインの約束



そうして、約束の日にガウェインが緑の騎士に会いに行くと、緑の騎士はガウェインの首に戦斧を振り落とす。




戦斧はガウェインの首をはずして頬をかすめた。





ガウェインが頭を上げると、緑の騎士は館の主人に姿を変え「誘惑と恐怖に打ち勝った君を赦そう。」と言うのであった。










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「円卓の騎士」一覧(アーサー王伝説)

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3.ランスロット登場

ランスロットの父ベンウィックのバン王は、アーサー王のブリテン統一戦に兵を送ったフランスの領主であった。

バン王は、それによって戦力が低下したところを狙われて滅ぼされてしまう。


落城から逃げ出したランスロットの母エレインが、湖で一息つくと、湖の乙女ヴィヴィアンにランスロットはさらわれる。


後に「騎士のなかの騎士」になることが運命づけられていたランスロットは、湖の乙女ヴィヴィアンに育てられ「ランスロット」という名前を与えられた。


成長したランスロットはアーサー王の「円卓の騎士」に加わるべくキャメロット城に現れた。


アーサーはランスロットがベンウィックのバン王の息子で湖の乙女ヴィヴィアンに育てられたことを知ると歓迎の意を示した。


この時、ランスロットはアーサー王の高い精神世界に心底惚れ込んだ。

Guinevere.jpg




一方で、この時、ランスロットと王妃グィネヴィアは視線が絡まりあったまま、互いに離れようとはしなかった。



その後、二人は不倫関係となっていく。






圧倒的な武勇と高潔な精神をもつランスロットは多くの女性から愛され、ランスロットを想うあまり命を落とす女性もいた。




カーボネックのエレインは、この国で最も美しいという評判が原因で、モーガン・ル・フェイの恨みを買い、魔法の力で、熱湯で茹でられ続ける苦しみを受けていた。


ランスロットがそれを助け出したことにより、カーボネックのエレインはランスロットに恋をする。

カーボネック

しかし、グィネヴィアへの一途な想いにおおわれているランスロットには、若く美しい女性の切な恋も届かなかった。


カーボネックのエレインは、魔法の薬の幻覚によってランスロットに自分を王妃グィネヴィアと誤認させて、ランスロットと一夜を共にする。


これによって誕生するのが「世に最高の騎士」ガラハッドであった。





アストラットのエレインは、身分を隠して槍試合に参加しようとしていたランスロットと出会い恋に落ちた。


アストラットのエレインは、ランスロットに自分の赤いスカーフを身に付けて槍試合に出るように頼む。


こうした行為は恋愛感情だけを表現するものではないが、騎士が試合に参加する時につけるスカーフは、母や姉や妹、妻、王妃などの女主人、友人なら二人といない存在、そういった名誉を守るべき唯一無二の女性のものであることが通例であった。



どうしても身分を隠して参加したかったランスロットは、それも変装の助けになると考えてアストラットのエレインのスカーフを身につける。




想いが届いたと勘違いしたアストラットのエレインは、ランスロットが試合で負った傷を献身的に看病し幸せな未来を想像した。




しかし、傷の癒えたランスロットがアストラットのエレインに振り向かずキャメロットに帰ってしまうと、アストラットのエレインは食事も取らず、睡眠もとらず、悲しみのあまり絶命してしまう。
アストラット

その後、ランスロットへの手紙を握り締めたエレインの遺骸は小船に乗ってキャメロットへ流れてくる。



グィネヴィアはアストラットのエレインの遺体を目にすると「美しい人」と声をもらした。









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4.世にも醜い貴婦人

アーサー王が世にも醜い貴婦人に助けられた時に「どんなものでも与える。」と約束すると、世にも醜い貴婦人は「円卓の騎士」から夫が欲しいと答えた。


困り果てたアーサー王が、その事情を「円卓の騎士」に話すと、ひとまず皆でその世にも醜い貴婦人に挨拶に行くことにした。



世にも醜い貴婦人は、片目が潰れ、歯は何本も欠けており、ヒゲが生え、縮れた白髪が不格好に伸び、さらに悪臭も放ち、名をラグネルといった。


「円卓の騎士」は皆、アーサー王に対する高い忠誠心を持っていたが、ラグネルのあまりに醜い容姿に皆、尻込みをした。



誰もがバツ悪く視線を泳がせる中で、ガウェインだけはジッとラグネルを見据えていた。


世にも醜い貴婦人

ガウェインはラグネルの瞳に潜む哀愁と気高さを感じ、深い同情と計り知れない尊敬を抱くのであった。

そして、ガウェインは名乗り出た。
「ラグネルよ。私の妻になって下さるか?」



そうして、結婚式が予定され、一同はラグネルを連れてキャメロット城に引き返した。

あのガウェインの妻となる女の醜さに城内は大きくザワついた。
ガウェインに憧れる婦女子達からは悲鳴すらもれていた。




結婚式の前日の夜、ガウェインとラグネルが二人きりになると、ラグネルの姿は若く光り輝くほどに美しくなっていた。


ラグネル - コピーラグネルは「これが私の本当の姿です。私はあの世にも醜い姿で愛してくれる男性が現れると、昼と夜のどちらかだけ元の姿でいられるのです。選んで下さい。」と言った。


ガウェインは「では、昼だ。愛する妻が城内で見下されるのは面白くない。私はオマエを愛しているから夜は醜くても構わない。」と返事した。


それに対してラグネルは「あなたは私に愛する夫の前で醜くいろと言うのですか?」と返した。




ガウェインは「では、オマエが好きな方が私の答えだ。」と言った。



するとラグネルは「それでは昼と夜の両方に致します。私の呪いは愛してくれる男性が現れると昼と夜のどちらか、そして、その男性が騎士らしく私の名誉を守ってくれたら昼も夜も両方、元の姿に戻れるというものでした。」と答えた。



こうして、ラグネルは完全に元の姿に戻るのであった。










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「円卓の騎士」一覧(アーサー王伝説)

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5.トリスタンとイゾルデ 1

激しい嵐の夜、キャメロット城に立派な竪琴を持った一人の騎士が現れる。

騎士はとても疲弊しており、アーサー王に食べ物と宿を求めた。

騎士はお礼に竪琴を奏で物語を歌いだした。

それは、キャメロット城にもその武勇の噂が届くトリスタンを題材にした物語ということもあって、アーサー王も「円卓の騎士」も姫君達も大きな興味を示して物語に耳を傾けた。






トリスタンは、リオネスのメリオダス王と王妃ブランシュフルールの間に生まれるが、メリオダス王はブランシュフルールを捨て別の女性を求めた。

悲しみにくれるブランシュフルールは我が子を「悲しみの子」という意味の「トリスタン」と呼ぶようになった。
トリスタン&マルク王




成長したトリスタンは自分を騎士として取りたててくれる主君を求めて旅に出るが、トリスタンの類まれな才覚と美しい容姿は、逆に妬みを買い、定住の地を見つけることが出来なかった。





そんなトリスタンをコーンウォールのマルク王は寵愛し、トリスタンはそれを大変に恩に感じ、マルク王に仕えるようになった。









かつて続いていたコーンウォールとアイルランドとの戦いは、コーンウォールがアイルランドへ毎年一定の貢物をすることで和睦がなされた。

コーンウォールはその貢物を送っていなかったが、アイルランドは長いこと黙認していた。


ところが、アイルランドにマーハウスという騎士が現れると、そのあまりの強さからマーハウスは政治的な発言力を増した。


マーハウスはコーンウォールにこれまで滞納した貢物の代わりとして、コーンウォールの子ども3人に一人を奴隷として差し出さなければ、戦争になると脅してきた。


そして、全てを拒否するならば、コーンウォールの騎士が自分と一騎討ちをして勝ってみろと言うのであった。


トリスタンは、マルク王に自分がマーハウスに挑戦をすると名乗り出て、決闘の場に赴く。



対決はトリスタンが圧勝し、マーハウスは瀕死の状態でアイルランドに戻ると間もなく息絶えた。






さて、マルク王は未婚で子がなかった。

そのため、マルク王は寵愛するトリスタンに王位を継がせようとしているのではないかという噂が立つようになる。

ゆえに、マルク王の縁者はトリスタンを疎ましく感じるようになっていった。

トリスタンが、そのような雰囲気をヒシヒシと感じている時であった。


マルク王の頭上を飛んでいた燕から一本の女性の髪の毛が落ちてきた。


その髪の毛は金髪ではあるが、影の中では青みを帯びて、日の光にさらすと炎のように輝き、この世に二つとない魅惑の色彩を放っていた。


マルク王はその髪の毛に想いを寄せるようになり、この髪の毛の持ち主を妻にしたいものだと言い始めた。

トリスタン2

トリスタンは、恩義あるマルク王の想いに報いりたいこと、マルク王の縁者からのあらぬ噂を払拭したいことから、自らがその髪の毛の持ち主を探し出してコーンウォールに連れて帰ると言った。


こうしてトリスタンは様々な武勇を見せながら各地を転々とした。




アイルランドの地は狂暴なドラゴンの猛威に悩んでいた。

そこでアイルランドのアグウィサンス王は、ドラゴンを退治した者には身分を問わず娘イゾルデを与えると布告していた。


トリスタンは、ドラゴンを倒せば、かつてマーハウスを殺したことをアイルランドに赦してもらえると考え、ドラゴンの退治に成功するが、力尽きてその場で昏倒する。


イゾルデは侍女らと倒れているトリスタンを発見して城に連れて帰る。

介抱する中でイゾルデはトリスタンが、かつて叔父マーハウスを殺した騎士であることに気付くが、トリスタンを赦すことにした。



回復したトリスタンは、この金髪のイゾルデこそが、主君マルク王が探しもとめている女性だと気がついた。

一方で、トリスタンは一目見た瞬間に体中が彼女を欲しているのを感じた。



そして、トリスタンはドラゴンを倒したということでアグウィサンス王と会う。

トリスタンは主君マルク王が金髪のイゾルデを求めていること、そして、コーンウォールとアイルランドの友好のために金髪のイゾルデがマルク王妃となることを求めた。


アグウィサンス王は、娘はドラゴンを退治した者に嫁がせるつもりであったが、退治した者の主君に嫁がせることは道理に反していないこと、そして、トリスタンの言うアイルランドとコーンウォールの友好のキッカケにも納得し、金髪のイゾルデをマルク王に嫁がせることを決めた。




トリスタンが金髪のイゾルデをコーンウォールに連れて帰る道中、二人は夢のような時間を過ごした。


お互いに惹かれあっていることは間違いなかった。









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6.トリスタンとイゾルデ 2

マルク王は金髪のイゾルデを目にすると大いに気に入り、トリスタンはその様子にただただ胸を痛めた。


金髪のイゾルデがマルク王に嫁いでから、トリスタンは常に忠義と恋愛に葛藤して苦しむことになった。マルク王を養父として尊敬していたが、金髪のイゾルデへの想いを断ち切ることは出来なかった。


そして、それは、金髪のイゾルデも同じであった。

優しいマルク王はトリスタンと出会わなければ間違いなく惹かれたであろう人物だったが、トリスタンへの想いを断ち切ることなど不可能であった。

トリスタンとイゾルデ2

トリスタンと金髪のイゾルデは、やがて密かに逢瀬を重ねるようになるが、やがてその間柄は露見してしまう。



マルク王は、一度は二人に死刑を宣告するが、金髪のイゾルデを愛していたこと、トリスタンを寵愛していたことから、トリスタンの国外追放処分で事は治まった。



トリスタンがコーンウォールを去る時、金髪のイゾルデは「二人がこの世界のどこにいようとも、私の夫は未来永劫あなたです。」そう言って、金の指輪を渡すのであった。


そうして、トリスタン各地を転々と流浪することになった。




「トリスタン、物語は終わりですか?」王妃グィネヴィアは言った。

金色の指輪を光らす指は、竪琴を奏でるのを止めていた。

この嵐の夜から、トリスタンは「円卓の騎士」に加わることになり、多くの活躍をした。




トリスタンがブルターニュに流れ着いた時、その地のホエル王と息子のカルヘルディンは、ヨヴェリン公爵なる人物から激しい攻撃を受けていた。


ホエル王の娘であり、カルヘルディンの妹である王女は、この世の者とは思えないほど透き通るような白い肌の持ち主で、白い手のイゾルデと呼ばれていた。


ヨヴェリン公爵は、その白い手のイゾルデを力ずくで奪い取ろうとしていたのであった。


トリスタンはホエル王に加勢し、見事にヨヴェリン公爵の軍団を追い返してみせた。

ホエル王は感謝の気持ちを込めて、娘である白い手のイゾルデをもらってくれないかと、トリスタンに申し出た。


トリスタンは白い手のイゾルデがあまりに美しいため、断って恥をかかせるのは忍びない思いがした。また、トリスタン自身が幸福に飢えてもいた。


白い手のイゾルデと結婚したトリスタンは、妻を裏切らない立派な夫であった。

ただし、妻に愛されたほどに、妻を愛することは、どうしても出来なかった。


それから、再びブルターニュは戦禍に巻き込まれ、トリスタンは瀕死の重傷を負うことになった。


トリスタンは日に日に衰弱していき、もはや自分の命が長くないことを悟ると、最後に金髪のイゾルデを一目見たいと切に願った。



トリスタンは、使者に金髪のイゾルデにもらった指輪を持たせてコーンウォールに行くように命じた。

そして、帰りの船に金髪のイゾルデが乗っているのであれば船に白い帆を、船に金髪のイゾルデが乗っていなければ黒い帆を掲げてくれと頼んだ。
白い手のイゾルデ


そうして、トリスタンが今まさに虫の息となり、白い手のイゾルデがトリスタンの手を握りしめていたその時、コーンウォールからの船が向かって来ているという知らせが入る。


トリスタンは白い手のイゾルデに船の帆の色をたずねた。


白い手のイゾルデは、船の帆が白いことを確認すると「船には黒い帆が掲げられています。」と答えるのであった。


金髪のイゾルデを一目見たい、その想いで気力を振り絞っていたトリスタンは、その言葉を聞くと、静かに息を引き取った。



トリスタンの死
数時間後、事切れたトリスタンのもとに到着した金髪のイゾルデは、トリスタンの亡骸に覆いかぶさると、悲しみのあまり離れようとせず、いつの間にか彼女も息を引き取っていた。



事の顛末を伝え聞いたマルク王は、悲しみの言葉も許しの言葉も一言も述べず、トリスタンと金髪のイゾルデの遺体をコーンウォールに運び、二人を同じ墓に埋葬した。









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「円卓の騎士」一覧(アーサー王伝説)

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7.「円卓の騎士」に新世代

パーシヴァルは母の手で、田舎でひっそりと育てられたが、ペリノア王の息子であった。

ペリノア王は、アーサー王とロット王が戦っていた時に、アーサー王に味方してロット王を殺した。そのペリノア王は、ロット王の息子ガウェインに殺される。

パーシヴァルの母は、そうした騎士同士の軋轢や因縁に息子が巻き込まれるのを嫌った。

実際に、パーシヴァルの兄であるラモラックは父ペリノア王の仇を討とうとして命を落としていた。


ウェールズの森で育ったパーシヴァルは素朴で天真爛漫な少年に育ち、パーシヴァルの母はささやかな幸せを感じていた。

パーシヴァル1



ところが、パーシヴァルが15歳の頃、家の近くを騎士達が通るのを見掛けるのであった。




パーシヴァルはキラキラと光る鎧、優雅な馬の足跡、騎士達の逞しいシルエット、そして、その中にいたランスロットの放つ言葉にならない存在感に、身震いするほどの憧れを抱いたのであった。




パーシヴァルの母は息子の様子を目にして、来るべき時が来たのだと観念した。
パーシヴァルは残念がる母に胸を痛めながらキャメロット城へと向かった。





アーサー王と「円卓な騎士」は、パーシヴァルの明るく純粋な人柄と森で培った身体能力を大いに気に入り「谷を駆け抜ける者」と呼んで歓迎した。



「円卓の騎士」となったパーシヴァルは、ある時、アーサー王の盃を奪った無礼な騎士を追いかけることになった。


すると、出陣するパーシヴァルに、誠の騎士にしか微笑まないと評判の乙女クンネヴァールがパーシヴァルに微笑んだ。




ケイは日頃から、田舎育ちでみすぼらしい格好をしているパーシヴァルをバカにしていたので、クンネヴァールが微笑んだことに癇が障り、彼女の頬を打った。



パーシヴァルはアーサー王の盃を取り返してくると、ケイを力ずくで懲らしめてクンネヴァールに謝罪するよう求めた。




パーシヴァルの登場からしばらく「騎士のなかの騎士」ランスロットの息子ガラハッドがキャメロットに姿を現した。

ガラハッドは、アリマタヤのヨセフの末裔カーボネックのエレインが、魔法の薬の幻覚によって自分を王妃グィネヴィアと誤認させランスロットと一夜を共にしてできた子であった。


多くの武勇を誇った「円卓の騎士」は今なお最高の騎士集団ではあったが、主要メンバーの高齢化に伴い、最も輝かしい時期が過ぎていることは皆が感じていた。


ガラハッドは、そんな折に現れた過去の栄光ではない全く新しい可能性であった。









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「円卓の騎士」一覧(アーサー王伝説)

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8.聖杯探求

キャメロット城との縁も浅からぬペレス王は、かつて受けた刃の傷に苦しみ、王が病むことによって、国の運営が不十分な状態になっていた。そのため、肥沃だった国土は荒れ地が目立ち、治安は大きく乱れていた。


アーサー王と「円卓の騎士」は、このガラハッドの登場を機に、悲願である聖杯探究に乗り出すことにする。

聖杯の性質は多くの謎に包まれているのだが、病の治癒などの功徳が言い伝えられていた。

そして「純潔」「謙遜」「忍耐」の徳を備えた騎士のみが聖杯探究に成功するとも言い伝えられていた。



「円卓の騎士」は聖杯を求めて、各々の冒険に旅立っていくが、その多くが心身に大きなダメージを負ってキャメロット城に戻ることとなった。

そして、命を落とす者も少なくなかった。



ガウェインはランスロットの弟エクトル・ド・マリスと行動を共にした。

旅の途中で二人は「慈悲と自制心と真理が足りない者は聖杯に辿り着けない。」という神の声を聴く。

ガウェインは、慈悲と自制心と真理が完璧でないがゆえに、仲の良い「円卓の騎士」ユーウェインを襲ってくる敵と誤認して殺してしまう。

ガウェインの聖杯探求の冒険は早々と幕を閉じた。




ガラハッドは「世に最高の騎士」のみが手にすることが出来るという、アリマタヤのヨセフの息子が作った鮮血に染まった新雪のような白地に赤い十字の紋章の盾を手に入れていた。
ガラハッド3

そのガラハッドがある城に向かおうとすると、通りすがりの老人が、あの城に立ち寄る騎士は必ず殺されるので別の道を選ぶように勧められる



その昔、その城は、屈強な7人の騎士が乗っ取り、近くに住む乙女達を、近くを通る乙女を、乙女という乙女を捕えて、閉じ込め続けているため、乙女の城と呼ばれるようになった。


ガラハッドが老人の忠告を無視すると、7人の屈強な騎士に襲われるが、ガラハッドは7人の騎士をこともなく打ち倒し、閉じ込められていた乙女達を解放した。





その後、ガラハッドは、パーシヴァル、ボールスと合流し、さらにパーシヴァルの妹ディンドランとも少しのあいだ行動を共にすることになる。

4人は聖杯がコルベニクス城にあることを知る。
船ガラハッド

コルベニクス城を目指す道中、ガラハッドの剣の剣帯はボロボロになっていたが、ガラハッドの剣の剣帯は罪なき乙女が自身の最も大事なもので作ったものでなくてはならなかった。



ディンドランは罪なき乙女だったので、彼女は少年のように頭を刈ると大事な髪の毛でガラハッドの剣帯を編む。




ガラハッドはディンドランにひざまずくと「私はそなたの騎士です。永遠に。」と言った。




その後、呪われた老女を助ける為に自らの命を差し出したディンドランは、自分の墓は聖都サラスに作って欲しいと願いながら息をひきとる。








さて、「騎士のなかの騎士」ランスロットは一足先にコルベニクス城に到着していた。

しかし、ランスロットは神の意思によって聖杯との接触を阻まれてしまう。

圧倒的な武勇と高潔な精神を持ちながらもランスロットは王妃グィネヴィアと不倫関係にあった。


聖杯に触れられるのは完璧な騎士だけだった。




ペレス王
ガラハッド、パーシヴァル、ボールスの三人はコルベニクス城で聖杯に辿り着くと、聖杯の功徳によってすぐにペレス王の傷を癒した。

こうしてペレス王は復調し、国は再び繁栄を取り戻さんとした。



三人はさらに聖杯を聖都サラスへと運ぶことになる。

その道中でも様々な困難に見舞われるが、三人はどうにか聖杯を聖都サラスまで持ち運ぶことに成功した。





すると、聖杯は最後にガラハッドのみを選んだ。



ガラハッド8ガラハッドは神々しい光に包まれると、この世では見えない色彩に見とれ、この世では嗅げない芳香を嗅ぎ、この世では聴くことの出来ない旋律に酔いしれ、やがて魂は肉体の束縛から解放され、圧倒的な快感と歓喜と共に神々のもとに召されるのであった。


パーシヴァルとボールスはその眩い様子を祝福と憧憬を持って見守った。

ガラハッドの遺体は、パーシヴァルによってディンドランの墓の隣に埋葬された。











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9.不吉な子モルドレッド

モルドレッドは、アーサー王が王妃グィネヴィアと出会う以前に、アーサーとその姉モルゴースとの間に出来た不義の子であった。

魔術師マーリンは「5月1日に生まれた子供が、アーサーの王国を滅ぼすだろう」と予言した。

モルドレッドは自身の生まれを理解し、不吉な子と呼ばれ、その人格形成は大きく歪んでいった。


成長したモルドレッドは父アーサー王のいるキャメロット城に現れた。


アーサーは快く我が息子モルドレッドを「円卓の騎士」に加えるが、モルドレッドはアーサーの表情が時間にもならないほんの一瞬だけ曇ったのを見逃さなかった。

アーサーにとってモルドレッドの存在そのものが自らの歴史の暗部であった。


モルドレッドはすぐに「円卓の騎士」の筆頭格である「騎士のなかの騎士」ランスロットと王妃グィネヴィアが不倫関係にあることを気付いた。



一方、アーサーは、不倫は死刑という法律を王自らがないがしろにするわけにもいかず、しかし、親友ランスロットと妻グィネヴィアを殺したくなく、嫉妬心を抑えて気付かないふりをしているアーサーに対して、モルドレッドは度々「父上は気付いているはずです。」とプレッシャーをかけ、来るべき日に決断を鈍らせないように伏線をはっていた。






密会突入

そして、ついにモルドレッドの計画によって、ランスロットとグウィネヴィアの不倫関係の現場がおさえられた。



ランスロットは命からがら逃亡するも、グウィネヴィアは捕らえられた。




この時、抵抗するランスロットに12人の騎士が殺害され、その中にはガウェインの息子ロヴェル、フローレンス、ガングラン、さらにガウェインの弟アグラヴェインが含まれていた。







もはや観念したアーサー王は、妻グウィネヴィアの死刑を宣言した。

ランスロットのグィネヴィア救出




こうして、王妃グィネヴィアの死刑が宣告されるが、処刑の日に現れたランスロットが圧倒的な武勇と超人的な馬術でグィネヴィアを救出するのであった。







そして、この時も、ガウェインの弟ガヘリスとガレスがランスロットに殺される。








アーサーはすぐにランスロット討伐に乗り出した。




しかし、多くの尊敬を集めるランスロットに味方する者も多く、アーサー軍とランスロット軍の戦いは激しいものとなる。




ランスロットとガウェインは親友同士であったが、弟達の仇を討たんとするガウェインはランスロットに一騎討ちを申し出た。

ランスロットはガウェインの弟達を殺してしまった負い目から思うように戦うことが出来なかった。

それでも「円卓の騎士」を代表する二人の戦いは、ふいに近寄れば巻き込まれて命を失いかねない凄まじいものであった。


激戦の末、ランスロットはガウェインを返り討ちにする。

ランスロットは体力を激しく消耗したが、親友を手にかけた事による精神の消耗はそれ以上であった。




心身共にすでに限界の域に達していたランスロット、ランスロットの消耗を心配するグィネヴィア、ガウェインまで失い被害の拡大を危惧するアーサー王、なにより3人とも自分達の三角関係が原因で多くの犠牲が出ていることが忍びなかった。


それぞれの思惑と良心の呵責の結果、グィネヴィアの死刑を取り消すことを条件に彼女をキャメロット城に返還し、戦いに終止符を打つことになった。









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10.アーサー王の最期

モルドレッド






グィネヴィアが先にキャメロット城に到着すると、留守を任されていたモルドレッドは強引にグィネヴィアを自分の妻にし、自らが新たな王であると宣言した。





モルドレッドがアーサーへの謀反軍を起こすと、キャメロット城の繁栄を妬んでいた周辺の豪族や諸侯が次に次にモルドレッドに味方した。







モルドレッド軍とアーサー軍はカムランの地で衝突し「カムランの戦い」は、これまでこの地上で起きたいかなる争いよりも激しく凄惨なものとなった。







そうして、多くの犠牲を出しながら、モルドレッドとアーサーが直接対峙した。

How_Mordred_was_Slain_by_Arthur.jpg



アーサーの槍がモルドレッドの腹を貫通した刹那、モルドレッドの剣は渾身の力でアーサーの脳天を叩き割った。





モルドレッドは即死し、アーサー王もすでに虫の息であった。





息絶え絶えのアーサーは、数少ない生存者であったベディヴィエールに、自分を近くの湖にある小舟に寝かせるように命じた。





小舟に横たわったアーサーは言った

アヴァロン



「私はアヴァロンに行って、このひどい傷を癒さなければならない。しかし、いつの日か、この世界が窮地に立ったとき、私は戻ってくる。それがいつなのかは私にも分からない。ただ、それが遠い先であることは間違いない。」






一方、グィネヴィアは、残りの長い人生を修道院で過ごすことを決意する。




時しばらくして、キャメロット城の滅亡を知ったランスロットが、グィネヴィアのいる修道院に現れ、ランスロットが再びグィネヴィアを求めると、グィネヴィアは身を引き「いいえ。もう二度と…。」と答えるのであった。



その後、グィネヴィアは終生、修道院で自分の恋が招いた戦いで失われた多くの命に対して祈り続けた。









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プロフィール

アーサー・ペンドラゴン

Author:アーサー・ペンドラゴン
「アーサー王伝説」関連の物語は著書によって、内容も登場人物の設定までも変わりますが、統一性の高いものを優先しつつ、ストーリーに矛盾や無理が生じにくいように一連の流れを書いてみました。

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